煙草・親父・サウナ
「なんでこんな時期に禁煙するんですか。」
研究室で最も尊敬する後輩SW氏に言われた。彼に言われたらぐうの音も出ない。云わんとすることは、
「このくそ忙しい時期に、生産性の落ちることをするんじゃない。」
ということで、僕の禁煙は三日で幕を閉じた。
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数年前アメリカで、とある人権運動のデモに参加した。彼の地は基本的に禁煙のイメージだが、屋外の喫煙所はかなり充実している。むしろ、外ならどこでも吸っていいだろうみたいな雰囲気もあり、あまりマナーはよくない。
さて、このデモ隊はいくつかの国で構成されていた。デモに参加するような輩は富裕層ではないので、当然ホテルも似たり寄ったり、ワシントンの郊外に固まることになる。僕もその一人で、ハイウェイの土埃で外が見えないようなホテルに泊まった。
ホテルの喫煙所は中庭に一か所。目立たない灰皿とボロいパラソルが設置されている。そして備え付けのベンチにはいつも、小太りで、禿げかかった長髪の、けだるそうな東洋人が座っていた。早朝でも深夜でも、彼はかならずそこに居た。
当然なんども顔を合わせるので、カタコトで会話を交わす。話し相手で国籍が変わる怪しい親父だったが、こっちも暇なのでとりとめもない話をしていた。
彼は僕に慣れてくると、毎度毎度「煙草を一本くれないか」とせがむようになった。煙草の遣り取りは、いわゆるタバコミニケーションの代表格なのでポンポンあげていたが、三日も四日も続くとこっちも辛い。外国での日本たばこは貴重なのだ。
「手持ちの煙草がもう無いから、これで最後だ」と言ったときの、彼の恨めしそうな目。ぼさぼさの前髪の隙間からギョロ目が覗き、じいっと僕を睨みつけてきた。そのまま襲われそうな錯覚に陥り、怖くてホテルの喫煙所では煙草が吸えなくなってしまった。
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先日ホームサウナで、いつものセッティングを楽しんでいた。サウナ・水風呂を3セットこなして、水風呂の脇のベンチに深く座る。来る昇天に向けて呼吸を整え、目を瞑る。
目を瞑っていても、目の前を人が行き来するのはなんとなくわかる。
僕の正面でピタッと誰かが停まり、なかなか動かない。薄目を開けると、僕のヒザ先1mあたりに、こっちをガン見している小太りの親父が立っている。動揺してすぐ目をそらすも、どこかで見た顔だと思ってもう一度見ると、アメリカの煙草クレクレ親父がこっちを凝視しているじゃありませんか。
当時の恐怖がぶわっと湧き出し、その日はサウナどころではなくなってしまった。
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という鼻くそのような恐怖体験だった。件のサウナ親父は、通りすがりのただの同性愛者なのだろうけど、あまりにも似すぎていた。
ひさしぶりにブログを書くので、メモ代わりに、新しく行ったサウナをば。
〇 極楽湯名取店 名取市の極楽湯。極楽湯グループは安心できる。安いし。
〇 とぽす 仙台に新しくできたサウナ。訪問時は、できて半年も経っていない新品つやつや。
〇 ニューウィング 錦糸町で着物メンとのサウナミーティング。力士と水風呂となった。ちょうど、話題のエアコンを水風呂に備え付けているところだった。
〇 長野県松本の浅間温泉街。サウナでないけど正統派温泉たっぷり。味わい深い建物多数。もちろんサウナ付きの銭湯もあり。
〇 パークプラザ大宮 大宮の老舗サウナ。中温サウナの向こうに高温サウナがある、室温が逃げない設計。
〇 ルーマプラザ京都 京都の繁華街(祇園四条)ど真ん中。思ったほど外国人は居なかった。
〇 おふろカフェ 籠原駅(熊谷)のちかく。従来のスーパー銭湯とは異なり、かなりお洒落。カップル多し。
〇 黄金の湯館 伊香保温泉。サウナはあるものの水風呂はなし。温泉街はかなり好き。