「良いサウナ」とは:日本サウナ総研のツイートから(1)*1
昨今、ひそかなサウナ・ブームが日本に舞い降りている。それはたとえば、テレビの露出やムック本で取り上げられてることからも、感じられると思う。
かつてこのブログでも触れたが、タナカカツキ氏は的確な表現を残している:
サウナは副作用のないドラッグだという人がいるが
サウナには強烈な依存という副作用があると思う
サウナには「ととのう」という概念がある。この「ととのう」体験をすると、それまでのサウナ観が一変される*2。「ととのう」概念を踏まえてサウナを紹介するときの文句として、うだ氏のツイートを紹介したい:
サウナを説明するにあたり
— うだ(日々是サウナ) (@shiruu) 2017年3月21日
水風呂との温冷交代浴によって発汗と血流を促し、自律神経、内分泌、免疫器官の刺激から体内の恒常性を発揮させ、生活習慣病の改善、ストレス解消、美容に効果があります!で通じることもあれば
宇宙と交信できる、悟りを開く、これは哲学なのだ!で通じることもあります。
サウナの楽しみを一度味わうと、「もっとすごい世界があるのでは」と思わずにはいられないものだ。
現に、サウナ愛好家の人口は日本サウナ総研のレポートによれば2600万人ともいわれ、週1回でサウナに入る人は約350万人らしい(ネット調査なので、この推計は鵜呑みにすべきではないけれど、一つの指標として)。サウナ愛好家は、思ったよりも多く、そこかしこを闊歩しているようで。
サウナを備える施設も全国各地に存在している。サウナの歴史自体は大変古く、発祥は紀元前におよぶらしいが、現在のようなサウナ施設が日本に広まり始めたのはここ50年ほどだ。オリンピックを契機に健康ランドが普及し始め*3、その後、健康ランドよりお手軽な立場としてスーパー銭湯が市民権を得た*4。(サウナの歴史も面白いのだけど、今回の主旨には合わないから、またどこかで)。
この半世紀で数を増やしてきたサウナ施設は、もちろんその中身も多種多様。さらには近年、アウフグース(一般的にロウリュの名前で通っている)をはじめとした”サウナに特化した”差別化が進んできている。サウナ愛好家にとっては、この上ない幸せな時代かも知れない。
さて、ここで多くの人(少なくともサウナ愛好家たち)にとっての関心事は「どこのサウナが良いのか」である。サウナ愛好家たちは、仕事や家族サービスの合間を縫って、自分にとってのベストサウナを求めて日々さまよい歩いている。
自分にとってのベストサウナを探すということは、良いサウナ・悪いサウナが判断できる、ということ。良いサウナ・悪いサウナの区別がつくということは、サウナに関する自分なりのこだわりを(無意識的にであれ)自覚していることになる。
このとき、たとえば主な関心は以下の2点だと思う:
①サウナで気持ち良くなる仕組み(温冷浴と人間の身体)
②自分はサウナ施設のどの点を重視しているか(例:施設の清潔さ、サウナの温度)。
よい施設を選別するとき、「①サウナで気持ち良くなる仕組み」に基づいた施設であればあるほど、昇天しやすくなるだろうと考えられる。ほうぼうでサウナの効用を謳っているが、サウナ(温冷浴)でぼくらが気持ち良くなる仕組みのキーワードは、どうやら「発汗」「自律神経の訓練」らしい。*5しかして、メカニズムは専門家しか理解できないし、そこまで深く踏み込む時間もない(正直その時間もサウナにあてたい)。
そこで、「身体の仕組みに基づいた、気持ちよくなりやすい」施設を、僕たちは経験的に探していくことになる。これはサウナ愛好家のサウナ探索という大変趣深い行為なのだが、これが「②自分はサウナ施設のどの点を重視しているか」の話になる。サウナのどの点が自分にとって大事かは、結局のところ個人の好みに依るところが大きい。ただ、個人の好みでも万人に共通する項目はあるもので、「他の人がどのサウナを愛用しているか」という情報は、ぼくたちに多くの知見を与えてくれるものだ。
サウナについての情報を発信しているものはたくさんある。インターネットで得られる情報は、例えば以下のものがある:
- 日本サウナ総研(twitter):今回の記事のメインデータソース
- サウナ王(twitter)
- 湯守日記
- Saunaで数えるOneからThousand:Google mapのサウナマップがすこぶる役に立つ。
- 俺のサウナ
- 東京銭湯 湯気どころ
- サウナマスター「大阪サウナ風呂」
- 安宿宿泊のススメ
- サウナの教科書(ムック本)
- マンガ「サ道」巻末付録:インターネットでは読めないけど、是非ともおすすめしたい。
これらの情報は眺めているだけでも、うっとりするようなレポートの数々だが、このまま情報量が溢れていくと杯盤狼藉の体を成すことは目に見えていて、とても全てを参考にすることはできない。そこで、情報集約的な(自分なりの)まとめかたを試みようと思う。
(つづく)
*1:この記事は、日本サウナ総研さんのツイート情報をもとに、どのサウナがよいか、管理人が好き勝手にまとめてみよう、という趣旨のものです。ブログ記事の正確さはなるたけ高くありたいと思っていますが、無論ブログなのでツイッターとか引用して好き勝手書いています。文中の誤りのすべては管理人の責任です。
*2:興味ある方は上述したタナカカツキ氏のマンガ サ道の第一話だけでも読んでもらいたい。この「ととのう」理由は、温冷浴時の成長ホルモン(主にプロラクチン),β-エンドルフィンの血中濃度が上昇するためらしい(Kukkonen-Harjula et al. 1989など)。まったく専門外なので理解はしてないが、どちらも脳に快感をもたらす作用(たとえば性行為・出産時から自傷癖もちの自傷直後までさまざま)があるようで、そういった物質の濃度がサウナで高くなるんだなあ,という素直な感想。というかこんなことをわざわざ計測するとか医学の懐深すぎ。
*3:出典:株式会社千代田の沿革,SAUNA 2004年8月号(日本サウナ協会) 注:日本における「蒸し風呂」の歴史を鑑みると、SAUNA文中の表記「日本初のサウナ」は、現在の形のサウナのことだろう。まあ、細かいことか。ちなみに、日本サウナ協会の新聞はバックナンバーの一部がpdfで公開されており、スパ業界の動向や情熱が伝わってくる。
*4:出典:プレジデント・オンライン記事2009, 玉岡設計のウェブサイト
*5:「サウナ読本」(サウナ・スパ協会),「医学的効能」(サウナ攻略サイト).いずれの情報も出典に弱いので、「ほんとうか?」と思うことはあるけど、わかりやすく纏めてくれている。ただ、こうした商業的記事は悪い部分や細かい点は載らないことも多い。んで、学術記事を探してみると、Clinical Educationの記事に、サウナ療法が有用なメカニズムが医学的に指摘されていた。まあ、医学はさっぱりわからないのだけど、ここでは「お医者さんがサウナの効果を研究している」という事実だけで十分面白い。さらに面白いことに、フィンランドの研究者は「サウナが突然死のリスクを下げる」ことを明らかにしている(日本語解説記事)。サウナに関する効能とリスクについてのLiterature reviewはKukkonen-Harjula and Kauppinen (2006)、サウナの死亡例についてはKenttamies and karkola (2008)。前者は公衆衛生のジャーナル、後者は医学誌(専門用語多くて理解不可)。もっと掘れば面白いの出てくるだろうし、いつかまとめてみたい。