「良いサウナ」とは:日本サウナ総研のツイートから(2)
ということで、ブログだから好き勝手に前置きを書いたけれども、この記事では日本サウナ総研さんの調査員方が日々報告しているツイートから読み取れる「良いサウナ」をあぶり出してみたいと思う。
先にハイライトを示しておくと
- 東京・神奈川を中心とした全国の良いサウナをリストアップすることができた
- 水風呂の温度が低いと、満足度を高めるようだ
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日本サウナ総研の調査員さんは、ツイッターを媒介にして、サウナの情報を流してくれている。たとえば以下のツイートのように報告してくれている。
【サウナセンター大泉 鶯谷】▲と◯の間
— 日本サウナ総研 (@sauna_soken) 2017年4月2日
4/1(土)曇入14:30出16:00普通3段目奥 94℃(表示)輻射強 並湿 換気並 水13℃(表示)水位腿 循環良 溢れ 拡散無 塩素臭無 外気浴無 座
<一言>水冷たく開いた扉からの冷外気に魂解放 室内の悪臭が気になる(ホリック) pic.twitter.com/HM1CNwThcY
このように、決まったフォーマットの情報を流してくれている。決まったフォーマットは、だいたい次の通り:
【サウナ名(場所)】◎ ◯ ▲ △ ×
— 日本サウナ総研 (@sauna_soken) 2016年9月23日
9/23(金) 晴・曇・雨
入24:00 出25:00
がら空き・空き・普通・混・激混・満員
1段目 2段目… 手前 真ん中 奥
頭◯℃ 足◯℃ (表示) (体感)
輻射熱 痛い・強い・普通・優し・弱い
極湿・高湿・中湿・湿・普通・乾・極乾
— 日本サウナ総研 (@sauna_soken) 2016年9月23日
換気 優・良・可・悪
水◯℃ (表示) (体感) 水深 膝・腿
循環 優・良・可・悪
溢れ無し・あり
大拡散・拡散あり・さざ波・無し
塩素臭 あり・少・無し
外気浴 座・寝、強風・そよ風・無風
〈一言〉〜〜〜
(サウナネーム)
この様式に従って、今のところ12人のレポーターたちが報告をしてくださっている(本当にありがとうございます)。レポーターらは生粋のサウナ愛好家であるため、彼らの動向を知ることは、良いサウナを知る上では有用だろう。
このツイート報告は2016年7月20日から続いており、2017年4月3日までの報告数は504。*1 この報告例を使って、諸先輩方の知見をすこし纏めてみよう、というのがこの記事の主たるところ。
さて、ここで個人的に気になる「良いサウナ」の条件は
サウナ温度と水風呂温度の差が大きいほど満足度が高いのか?
ついでにこの関心も検証してみたいと思う。まずこの記事では、簡単な結果だけ報告する。導出方法に関するあれこれや問題点は次の機会に。
〇 報告されているサウナ
日本サウナ総研で報告されているサウナは、ほとんどが関東圏に偏っている(表1)。
報告のほとんどは、東京・神奈川に集中している。東京・神奈川で報告されたサウナは、表2の90施設だった。
日本サウナ総研の熟練のサウナ愛好家たちが、どのサウナが好きかが見えてくると思う。アダムアンドイブ,オリエンタル,VIVI,レスタなどはやはり投稿数が多いだけあって、良い施設だということが伺える。
ちなみに、東京・神奈川に全部でどれだけのサウナがあるのか把握してないが、タウンページに載っているのは151施設。それらと、報告サウナを地図に落としてみると下のような感じになった。
ここでは、+がタウンページのサウナ、●が報告サウナをそれぞれ示している。パッと見で、西東京のサウナ報告が少ないようなので、発掘のしがいがありそうだ。
もちろん、タウンページ以外にもいろんな情報を参考にすれば、もっと多くのサウナ施設が存在しているはずだけど、今回はひとまずの結果、ということでご容赦を。これらの結果からわかるのは、通勤圏などに多くサウナが集中していそうなこと、だろうか。(この偏りが本当かどうかは、電車の乗降客数とか使っていつか確かめてみたいので今後の楽しみということで。)
〇サウナ温度と水温が満足度にもたらす影響
上記のようなサウナ・リストを作れただけで、ぼくにとっては、日本サウナ総研の調査員のみなさんに感謝しきれないくらいありがたいことです。しかし、日本サウナ総研ツイートには様々な情報がせっかく載っている。ここではサウナ温度と水風呂の温度が、満足度にもたらす影響をざっくり考えてみたい。
まず、サウナの温度はだいたいどれくらいなのだろう。ざっくりした分布は以下の通り。
縦軸は密度(多さ),横軸はサウナ温度を表している。だいたい100~110度のサウナが多そうだ。
水風呂の温度も同じようにみてみると、
こちらでは、15度の水風呂が圧倒的に多いようだ。
サウナ温度、水風呂温度やほかの項目をざっくりまとめると、表3のようになった。
Dとついてるやつは、「~かどうか」と解釈してください。たとえば、晴天Dは晴天時だったかどうか。その割合は65.3%。外気浴無Dでは、外気浴が無い割合が26.6%。表3からは、サウナ温度の平均は93.82度, 水温は16.31度ということがみてとれる。
改めて、日本サウナ総研のツイートでは、サウナの満足度が◎ ◯ ▲ △ ×の5段階で評価されているので、上から順に5,4,3,2,1と割り当てる。
サウナ温度と満足度の記述を散布図で概観してみると
縦軸は1-5評価、横軸はサウナ温度。ここでは目立った相関は無いように見える。
水風呂も同じようにみてみると以下の通り。
ここでは若干、水風呂の温度が低いと満足度4,5に偏っていくようにみえる。
しかし、サウナに満足するかどうかなんて、サウナ温度と水風呂温度以外にもいろいろ左右されるもので。これらを均して、サウナ温度・水風呂温度だけの影響をみてみたいと思ったら、みんな大好き回帰分析の登場である*2
これをやってみた結果は、以下の通りでした:
- 温度差(サウナ温度ー水風呂温度)は、満足度に影響する。
- どっちの影響が大きいのか?サウナ温度・水風呂温度別々の影響度をみてみると、サウナ温度は満足度に影響しない。
- 一方、水風呂温度は影響している。水風呂の温度が低くなると、満足度の〇および◎を選択する確率が高くなる。
- したがって、水風呂の温度に敏感に反応していそうである。
一応の結果は載せておきますが*3、この推定量はものすごい問題を含んでいることを強調しておきます。ただ、私の興味を満たすにはよきエクササイズでした。
今回の日本サウナ総研さんのツイートをまとめてみて得られた知見は以下の2点:
- 東京・神奈川を中心とした全国の良いサウナをリストアップすることができた
- 水風呂の温度が低いと、満足度を高めるようだ
いい機会になったので、このブログでサウナの歴史やら動向もまとめていけたらなあと思う(ぼくの日記的な記事ばかりでは、あまり内容も意味をもたないですし)。推定量の導出については気が向いたら書きますが、もしかしたら実名ホームページのほうで書き下すかもしれません。
ひとまず、この記事がどこかのサウナ愛好家に少しでも貢献できたら、と願っています。
*1:1つのツイートで2つのサウナについて報告していたら、2つとカウントとしています
*2:直観的に回帰式を書き下すと
ここでSaunaはサウナ温度,Waterは水風呂温度。Xはそれ以外の要素(天気、輻射熱、湿度、換気、水位、循環、塩素臭、外気浴、サウナ固定効果、報告者固定効果)をひとまとめに書いちゃったやつ。このXを入れることで、「X内の諸要素が同一状況のときに、サウナ温度、水風呂温度が与える影響がどのくらいの大きさなのか」をある程度俯瞰することができる、と解釈なすってください。
パネルAは式1,パネルBは式2の結果。yは序数なので、二通りの推定方法を示しています。Linear Probability Model(LPM)は最小二乗法で,Ordered logitは最尤法で推定しています。LPMはあくまでも比較(概観)用です。共変量,報告者FE, サウナFEは式の変数Xに相当します。雑な表記ですがどうかご容赦を。詳しい解釈は、いつか導出方法と一緒に書きます。
この推定量は、どれだけ間違っているかを書き下したうえでやっと少し意味を持つ数字なので、いまのところ安心感ゼロです(なんか恥ずかしくなってきた)。