月夜野焼という、なんともググッとくる名前の焼き物がある。群馬県みなかみ町に併合された、旧月夜野町の名産物だ。
ぼくは焼き物に詳しいわけでもなんでもないが、群馬のAckieのところへ遊びに行くので、彼の車で連れて行って貰おうと思っていた。
が、いざ起床したら、すでに集合時間となっていた。3時間ほど遅れて群馬に入国。
(腹たつほどに快晴の高崎駅前)
A「今日はなにしたい?」
わ「月夜野焼の窯にいきたかったけど。」
A「まあ、遅いよね。」
わ「・・・すいません」
A「俺は軽井沢でも行こうと思ってたけど、もう無理っぽいよね」
わ「ほんと、すいません」
時刻は16:00。とりあえずコーヒーを飲みまくる。
A氏は根っからのプレス好き。彼にエスコートしてもらう珈琲屋は、決まってプレス珈琲が美味しい店ばかりだ。ドリップに比べて、プレスを提供しているお店が少ないのに、よくもまあ見つけてくるものだ、といつも感心している。
この伊東屋珈琲は、とても美味しいプレス(350mlくらい)を安価で出してくれた。しかも豆はスペシャリティだ・・・マグカップ2杯半のスペシャリティコーヒーが450円。東京なら1000円近くはするだろう、正直いって破格の値段だ。珈琲を持ってきてくれた綺麗なネーちゃんに訊いてみると、店舗は新潟の古民家を移動してきて改装したものらしく、内装も落ち着ける雰囲気。
「群馬スゲェ・・・」とぼやいていたら、「知らないだけでお前の周りにもあるはずだ。とにかく車を買って探検するんだ。その前にお前は免許だな」と、ぐうの音も出ない正論でA氏に捻り潰される。
続いて2軒目は、前橋まで移動して、ダンディなマスターが経営していたお店へ。
こちらも、プレス抽出のスペシャリティコーヒー。こちらはさらに飲みやすく、プレス独特の感じも失われず。サンドイッチもうまかった。
高崎まで戻って夕飯。A氏が「自分へのご褒美のときのお店」という居酒屋へ。
居酒屋和人良(わじら)、これまたイケメンなマスターがやっている。長髪を結って作務衣だ(ほんとにかっこええ)。店内は高級感が漂い、群馬なのに(失礼)刺身が美味しい。ほかにも、フキノトウの天ぷら(これは即決)や、サバと梅の揚げ物などなど。全部美味い。
お腹も膨れ、眠くなってきたので今宵の宿へ。
高崎と前橋の境あたりにある、スーパー温泉に到着。ここのすばらしいところは、源泉かけ流しがあるところ。温度は46-48℃と高めで、身体中がビリビリする。その代わり、芯まで温まる。 さらに、サウナと水風呂が外にある(!)。
サウナは遠赤外線のストーブ式で、温度が90℃ほど。発汗良し。水風呂は20℃くらいか、ややぬるいけれど、冷たい外気と相まって最高だ。源泉とサウナ、水風呂を組み合わせて5往復ほど行き来し、そのまま外のベンチに腰掛ける。この日は雲ひとつなく、あまりにも綺麗な満月だった。
仮眠室でA氏と横になる。うとうとしていたときに、漫画棚から伊藤潤二傑作選を発見してしまい(じつはあまり見かけないのだ)、読んでいたら朝になってしまった。少し寝てから朝飯・朝風呂を堪能し、退店。宿泊費込みで2200円。
(天神の湯外観。まわりはのどかな風景だ。ばあちゃんたちが散歩をしている。)
今日はなにしようかと思案していると、
A「焼き物がどうって言ってたよね」
わ「うん」
A「前から気になってるところがあるから、そこにいこう。」
さすがAckie:世界の珈琲と日本のやきもの - 大和屋(ここまで完璧なエスコートされたらもう惚れちゃう)
大和屋は珈琲も飲めるし、珈琲器具はめちゃくちゃあるし、なにより全国の焼き物がアホみたいに揃っていた。試飲をしながら店内をまわる。
通常、焼き物メインのお店は高齢の方ばかりで、しかもあまりお客さんが多くもないのだが、このお店は家族連れで賑わい、小さい子たちが陶器を壊さないかとこちらが心配になるほどに混んでいる。もちろん陶磁器の品揃えもすごく、北海道から沖縄まで、作家単位で展示されている。焼き物のセレクトショップみたいなものか(追1)。
1時間ほど彷徨き、群馬のやつをひとつ購入。すると、レジの上品な女性がお茶を点ててくれる。こりゃすごいサービスだ(しかも煎茶なのに美味い)。そのまま大和屋の隣の珈琲屋あしびへ。
ここはサイフォン式の珈琲で、値段もお手ごろ。もちろん美味しい。なにより、店内がこれまた落ち着ける空間。A氏は「いいとこみつけちゃった」と一人興奮している。
そのまま歩いて麺屋大谷へ。博多ラーメンを食べてから大和屋へもどり、今度はA氏のマグを求めて店内をブラつく。
A「こっちのマグは佐々木希」
わ「こっちの湯のみは木村文乃?」
A「これは木村文乃じゃないでしょ!あーでも迷うわ・・・」
端から聞いたら哀しすぎる会話で2時間も経っていた。結局、彼は北海道のまるっこい湯呑を購入。
大和屋を出発しドライブしていると、豆屋を発見。
Malidon coffeeというらしい。覗いてみると中に人はおらず、店舗正面の建物からオカミさん登場。どうやら自宅の正面に店を構えているようだ。
わ「おためしで、とりあえずホットコーヒー2つください」
オカミ「好きな豆選んでいいよ。ぜんぶ100円で淹れてあげる」
A「まじすか」
気さくなオカミさんとしゃべりながら店舗前で飲んでいると、犬を連れたおばあちゃんが現れる。1日2回、犬の散歩がてら店に立ち寄って飲んでいるという。
わ「この子(犬)は何歳ですか?」
おばあ「もう15歳。あたしは70すぎよ。二人でババアだからフタバよお」
しばし立ち話をし(案外こういう時間が貴重だったりする)、豆を買ってお店をあとにする。
前橋市街まで車を走らせ、さらにRobson 2号店で珈琲を飲み、商店街を探索。
(地方都市はどこもおなじようなものなのかしら。味があるともいえる)
最後は高崎駅まで送ってもらい、A氏と解散。彼に頼りっきりな、すごく贅沢な2日間だった。
追記1)手前勝手なポリシーで、出先では酒でもなんでも、なるべく現地のものを買うようにしているのだけど、この店ばかりは目移りしてしまう。こうして、全国のものを並べてみるのは初めての体験だった。いくつか気に入ったが、老後の楽しみにとっておきたい気もする。というか、うちの貧相な食器棚がもう限界間近か。というか、うちの8畳自体がもう手狭になってきた。嗚呼いとまどし。
追記2)なんか、全体的にA氏といちゃいちゃした日記みたいになってしまった。
追記3)最近見つけた読書猿さんのブログのクオリティがすごすぎる。記事ひとつひとつの内容が濃く、これで700記事以上って、この人化け物か。しかもアカデミア所属じゃなく、個人研究者かもしれない。世の中広いなあ。
追記4)東日本大震災からもう6年か。この日は、岩手日報の記事が話題になっていた。
きょうで東日本大震災から6年。3月11日を、すべての人が大切な人を想う日に。 #最後だとわかっていたなら https://t.co/XKs6ewIJ0E pic.twitter.com/FDWbxthrkR